1. ホーム >
  2. 教えにふれる >
  3. 読むページ >
  4. 御遠忌への道/御遠忌からの道(資料集) >
  5. お念仏あればこそ―今、親鸞聖人に遇う― 藤谷純子氏

お念仏あればこそ―今、親鸞聖人に遇う― 藤谷純子氏

2015年3月28日に行われたお待ち受け大会での講演「お念仏あればこそ―今、親鸞聖人に遇う―」(講師 藤谷純子氏/大分県・勝福寺坊守)の抄録(『名古屋御坊』新聞2015年5月号2面掲載)を掲載しています。

  お待ち受け大会講演 (2015年3月28日)
講題 お念仏あればこそ―今、親鸞聖人に遇う―
講師 藤谷純子氏/大分県・勝福寺坊守
ほか ※ 抄録(『名古屋御坊』新聞2015年5月号2面掲載)を掲載

僧伽なる寺

 最近ようやくお寺が私のための、ともに生きる真宗の精神を体得する僧伽なのだと感じられるようになりました。様々な人生を抱えて集まってこられる同朋の方々と、お念仏の学びを続けています。互いに違いばかりが際立って、違和感を覚えてしまう私たちですが、ご本尊の前に並んでお念仏申して出会い、またお念仏申しつつそれぞれの生活の持ち場に帰るという聞法の集いが、この人生に与えられているということは、どんなに幸せなことでしょうか。放っておけば、世間的な利己心に振り回されて、孤独に、不足不満の中に暮らしてしまいます。
 ですから、一度限りの「人身受け難し」という人の身を与えられ、その身を同時代に生きる人々とともに、それぞれの人生の成就、何のために生まれてきたのか、満足して死んでいけるのか、そういう“後生の一大事”といわれてきた課題を仏法に問い、語り合う場を開いてくださっているのが、お念仏の教えですね。そして、千変万化のいのちの相を拝ませていただけるのがお寺であり、ひいてはこの世でもありますね。

出遇い

 私たちは自我心を依り所にして、自分の身を、心を、力を信じて自由に生きようとしています。しかしながら、これほど成り立ちにくいことはありません。時々、アスリートの方が「自分を褒めてやりたい。自分を誇らしく思う」とおっしゃいますが、一方では思うようにならない自分を見下げたり、嫌悪したり、無責任にも逃避しようとしたりしています。「人間は、自分という牢獄に閉じこめられた囚人である」とおっしゃった方がいますが、この自己満足を追求していく自我心の作り出す牢獄によって、与えられた我が身を苦しめ、生きられなくしているのでした。この自我心の問題は、私たちが頼りにしている科学的合理的な知恵によって解決することはできないのです。
 私も、この身と自我心の葛藤と乖離に悩まされました。そのためひもじく、さびしく、けだるく、むなしく日々を過ごしていたある時、「あなたは自分を持て余しているんだね。自分が自分だけで自分である、そんな自分なんてものはないんですよ」と言われた出雲路暁寂先生との出遇いに恵まれました。そうして、だんだんと真宗の学びへと導いていただきましたが、この身の重さは増すばかり。とうとう「仏教の勉強はもうやめます。グルグル言葉が廻るだけで、私の身が満たされるということがありません」と訴えたところ、先生は「本を読んだり、考えたりではもう間に合わないところにきているんだね。お念仏を申してみませんか」と言われました。しかし、とても申してみる心がおきませんでした。その時、先生は私の前で合掌し「ナンマンダブツ、ナンマンダブツ」と申され、「あなたにはそらぞらしく聞こえますか」とおっしゃいました。私は、生まれて初めてお念仏申す人、お念仏にいのちをいただいて生きている人に出遇ったのでした。その時からお念仏申せないことが私の問いとなり、大谷専修学院へと導いていただきました。

濁世に生きる

 このいのちは私個人のいのちではありません。本当に多くの人や自然からのたまものとして、今ここに生かされているというのが事実です。出雲路先生は、「世界に贈られ、世界からいのちを賜って、今ここにいのちの花一輪咲かせてもらっている」とおっしゃいました。世界によって自分がある。そういういのちを生きているのにもかかわらず、自他のいのちを我欲我見によって穢してきました。けれど、そのいのちは、世界と一つに生かされているいのちです。それが清浄な安らかないのちですね。赤ちゃんが安らかなのは、世界を信頼して身を投げ出しているからです。私たちは、赤ちゃんを見て、いのちの本来性を教えられるのだと思います。また、死ということも、私の思うような死に方はできません。与えられた死を私たちは死んでいく、それで十分ではありませんか。
 お念仏あればこそ、この自我心を浄化する光、生きるいのちの歓びを与える光、自らの愚かさを知らしめる光を被っていのちの本来性に甦らせていただく。この濁世に大悲の光ありと言わねばならないと思うことです。かたじけないことですね。 (文責編集部)

▲ ページの上部へ