(1) 両堂ご修復の機縁
 
  この連載では、過去の両堂再建の歴史をたどり、現在進行中の両堂ご修復の意義を尋ねようとする。その目指すところは、このたびのご修復が、門徒を自称する私どもにとって、宗祖に出遇う機縁となればと願うからである。「宗祖に遇う」とは、自らが宗祖の門流にあり、その門徒であることを確認することと考えている。
  ご本山では、2011年の宗祖七百五十回御遠忌厳修に向け、記念事業の一環としての両堂ご修復が進められている。事業の総規模の決定まで、金額の多寡や割当の有無などの論議があったが、今は、来春からの御影堂屋根瓦葺替えのための、素屋根工事が順調に進捗している。
  現在の両堂が竣工したのは今から130年前の1894年。1864年に焼失してから30年、再建発示のあった1879年からは16年がかりの大事業であった。経費は、大工諸職人185万5586名(日当平均34銭)、工料60万9860円、購入木材代58万5029円と記録される。寄付木材の総代価や幾多にのぼった奉仕ご門徒の入用は積算記録がなく、総費用は現在に換算して最低2000億円と見積もられる。
  それにしても、経費のみならず膨大な労力を要したものである。地域で用材寄進を決めた場合、山中深くから伐り出して最寄りの木揚げ場に運ぶには多大の人力を要し、木揚げ場での滞留中には要員の米味噌醤油の現物寄進で支援し、本山に回漕して加工し、さらに組み上げるにも人力を頼った時代であった。現在では建設技術が進み、重機も投入されて効率の良い工事が期待できる。汗水流してお取り持ちをする必要が無い反面、工事に直接関与する喜びが薄いと予想される。極端な場合、資金面だけの担当では、法義相続の機縁とするには十分ではないかもしれない。両堂再建の過去に照らせば、建築に目を奪われ、教学振興とそれに基づく門末教化を欠いたのが、最大の反省点であったことに学ばなければならない。
 
 
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